食パン、ハムエッグ、ブロッコリー。毎朝ほとんど同じ内容の朝食は、お母さんが作ってくれる。
私はシリアルでもいいけれど、タンパク質をとったほうがいいとお母さんは言うし、そんなことで言い合いになっても面倒なので、おとなしく従うことにしている。
ハムエッグは固焼きだ。私は少し半熟が好き。でも、お母さんは固く焼く方が安全だと思ってる。

「真香(まなか)」

お母さんが私を呼んだ。自身は5分ほどで食事を済ませていて、すでに食器を流しに置いている段階だ。

「面談、いつになるか早めに連絡しろって担任に言っておきなさい」

私はごくんと食パンを飲み込み、頷く。お母さんは私を見ずにテーブルを拭いているので、非難がましく「返事なさい」と言った。

「うん、わかった」

あらためて言葉で答えると、お母さんは納得したようだ。我が家ではよくあるやりとり。
お母さんは慌ただしく食器を洗ってから、私に向き直った。

「春の三者面談なんて進路についてでしょ?どうしたってそこは行かなきゃいけないから、休み取りやすくしてほしいのよ」
「聞いておく」
「今日中によ」
「わかった」

私の返事に満足したのか、お母さんはリビングを出ていく。化粧は出がけギリギリにするのが習慣なのだ。