「……え、死ぬって……なに言ってんの?」
脳が揺さぶられ頭が真っ白になり、激しい動悸が俺の心臓を襲う。
「死ぬの。どうせ死ぬの! だから……」
俺は一度ゴクリと唾を飲み、震える手に力を込めた。
「だから、私に近付かないで! 話しかけないで! お願い、お願いだから……笑いかけたりしないで!」
走り去る彼女の瞳から、大粒の涙が零れ落ちるのを見た。
誰もいなくなったベンチから蕾の付いた桜の木を見上げ、そして空を仰いだ。
風の冷たさを感じない代わりに、心臓を突き刺されたような衝撃が体中を駆け巡る。
俺は一人、ただそこで呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。