「もしかして転校生の話?」

いつの間にか理紗が席の横に立ち、腕を組みながら俺を見下ろしている。


もしそうだと言ったら、『可愛いとか可愛くないとか、男子ってそういうところでしか女子を見ないよね』などという説教が始まりそうだから「別に」と答えようと思ったのに、大和が「そうそう」とノリノリで答えてしまった。


だが理紗は、俺の想像とは違う反応を返してきた。


「一人の転校生がたくさんある高校からうちの高校を選んで、しかもうちのクラスに来るって、なんとなくそれだけでも運命だと思うし一期一会って感じしない? 仲良くなれるといいよね」


ポカンと口を開けて理紗を見上げた。

運命とか一期一会とか、そういうことを言うタイプだったっけ?

少なくとも会話の中に四字熟語を入れてきたことなんか今までなかった気がするが、転校生という存在に理紗もテンションが上がっているんだろうか。


「言い過ぎな気がするけど、まぁそうなのかな」

理紗の言葉に若干戸惑い気味に答えると、理紗は誰も立っていない教壇に視線を向けて微笑んでいる。


可愛い転校生が来ることにより女子の嫉妬が始まって、割と平和だったこのクラスにギスギスした空気が流れるかもしれないと少しだけ心配になったけれど、理紗がいればそれはないか。

子供の頃から男女関係なく誰とでも仲良くなれて、明るく元気で正義感の塊みたいな奴、それが理紗だからな。