そんなバカなことあるか。

他のクラスメイトとは楽しく話をするのに、俺が話しかけても目を合わせず声も出さない。

雪下さんが転校して来てから一ヶ月が過ぎたというのに、その態度は一向に変わらない。それが、特別だからだと?

いやいや、あり得ない。もし万が一そうだとしても、その特別がどういう意味なのか説明がつかないだろ。


ニヤついている大和に、俺はフッと微笑み返した。

「あのなー彰、それはいくらなんでも妄想が過ぎるぞ。だって考えてみろよ、俺だぞ? なんの取り柄もないごくごく平凡で毎日適当に生きて、大和みたいにイケメンでも夢があるわけでもない。本気で夢中になれることはなに一つない、つまんねぇ十七歳だ。まともに話してもいないのに特別なんて都合が良すぎる」


喋っているうちに、俺は今までなにをしてきたのだと虚しい気持ちになってきた。


小学生の頃の夢はお医者さんになること、だったな。

今更思い出しても遅いけれど、もしもっと頑張っていたら違う自分になれたのかもしれない。

もし、中学も高校も悔いなく精一杯過ごしていたら、もっと楽しかったのかな。

でも今さら頑張ったところで、残り一年の高校生活で変われるとは思えない。



「あるじゃん」


沈みきっている俺の心情とは正反対に、大和は快活そうな声で言った。


「あるじゃん、夢中になれるもの」

「なんもねーよ」


「俺にとって夢中になれるものはサッカーだけどさ、お前にとってはそれが……雪下さんじゃないのか?」


「えっ……」