「転校生、興味ないのか?」
「別にー」
興味ないわけではないが、興味を持ったところでただそれだけ。
噂になるほど可愛いなら尚更、俺には一ミリも興味を示さないだろう。
なんせ俺は、平凡中の平凡だから。
成績も運動も顔も真ん中。良くも悪くもない。クラスに一人はいる普通の男子。
性格もそうだ、暗いわけでも明るいわけでもなく、楽しい話をしている時は笑うし、なんだかだるいなーと思ったら機嫌悪くなったりもする。
人気者とか真面目とかヲタクとか、なんかしらの言葉で表すなら……〝人間〟としか言えない。
自分をそんな風にしか説明出来ないのはどうかと思うが、部活もやってなければ趣味もなく、将来の夢もない。
学校は楽しいが、正直なにも考えていない。
ただ毎日を〝普通に生きている〟だけだ。
「彼女欲しくないのか?」
「それ聞いてどうすんだよ」
うしろにいるリア充大和の方には振り返らず、机に頬杖をついたまま答えた。
「いや、別に。彰に彼女が出来るとしたらどんな子なのかなーって」
「なんだそれ」
「最近一番気になることだからさ」
「そんな無駄なことに一番を使うな」
彼女が欲しくないわけない。俺だって普通の十七歳の男なんだ、むしろ彼女は欲しい。可愛ければ尚良い。でも現状、それは不可能に近いだろう。自分のことは自分が一番よく分かっているから。
例えば彼女が出来て映画とか遊園地とか行ったとして、もしつまらなかったら俺は顔に出てしまう。興味ない映画なら多分寝るし、遊園地の並ぶ時間が長かったらため息が出てしまうかもしれない。
買い物なんか付き合わされた日には、最悪だ。
今年の夏だったか、幼馴染でクラスメイトでもある藤巻理紗(ふじまきりさ)に無理矢理買い物に付き合わされた時、『キープ』とか言いながら何度も何度も同じ店を回って、どっちがいいか聞かれて適当に答えるとなぜか怒られて、とにかく疲れたという記憶しかない。
彼女が出来ても、こんな俺ではきっとすぐに振られて終わりだ。
そういう考えが頭の中にあるからか、好きな人すら出来ない。
万が一好きな人が出来て、それが今までの考えを覆してしまうほど夢中になれる子なら違うのだろうか。
ラブストーリーの映画も眠くならず、遊園地の待ち時間なんてあっという間に過ぎて、買い物も疲れを感じないくらい楽しい。想像出来ないけれど、そんな子に出会えたなら、ただなんとなくだらだらと生きている俺の人生は変わるのかな……。