「もしかして、助けてくれたのか?」


教室に向かって歩きながら大和が聞いてきた。顔がだいぶニヤついている。


「は~? 別に助けてねぇし」

俺がそう言うと、クスクスと笑っている大和。

今更ながら、友達を助けるとか恥ずかしいことをしてしまったなと思った。


「まさか彰があんなことするなんてな」

「なんも考えずに気付いたら動いてただけだ。助けようとかそんな気合入れたわけじゃねぇよ」

「そっか、彰らしいな。でもさ、ありがとな」


前を向いたまま、俺は「おう」とだけ答えた。
感謝されるようなことはしていないからか、少し恥かしい。



「彰ってほんと、なにも考えてないよな。あそこで先生が来なかったらお前もボコボコだったかもしれないのに」

「うるせーよ」

「でもさ、考えてないところが彰の良いところだと思うぞ」

「は?」

「本能っつーか、考える間もなく俺を助けようと瞬時に思ったってことだろ。なにも考えずに取った行動が、時に誰かを救うことだってあるし。現に俺は今助けられたしな」


「そんなんじゃねーって。そんなことより、なんで殴られたこと言わなかったんだよ」


二年の廊下に差しかかった時、ちょうどチャイムが鳴って少しだけ歩く速度を上げた。


「もうすぐ先輩も卒業だしな、別にわざわざことを大きくする必要ないし」