時間を気にしながら探していると、しばらくしてインターホンが鳴った。理紗だろう。

一緒に行くというのはやはり冗談ではなかったらしいが、今俺はそれどころではない。


玄関に行くと、鞄を持っていないしネクタイも閉めていない俺を見て目を細めた理紗。


「悪いんだけど、先行ってて」

「え? なんでよ」


あまり大きな声を出すなと言わんばかりに身を縮めて理紗に近づく。


「今日出さなきゃいけないプリントが見当たらなくて探してんだ」

「え? まだ出してなかったの?」

驚いて目を開いた理紗を見て、俺は頭を掻きながら頷いた。



「なにやってるの?」

リビングから母親の声が聞こえてきたが、俺は冷静を装って「なんでもねぇよ」と答える。

母親にばれて進路のことをあれこれ口出しされるのは面倒だ。


「探してから行くから」

理紗は腕を組んで一度俯いた後、顔を上げて言った。


「じゃー遅刻決定ってことね?」

「あー、まぁそうなるな。どうせ皆勤賞はなくなったし」

「そっか、出してないのか……。分った、先に行く」

「うん、悪いな」