「美琴と喋った?」

 三駅目に着くと、電車の揺れに合わせて俺の体が一瞬ビクッと震えた。

すぐに答えられずに目線を上に向けると、ドアが閉まって再び電車が走り出す。


「まぁ、挨拶程度は」

俺の返答に対して、理紗は口を尖らせながら無言で見つめてくる。

今の言葉が不満だったのだろうか、それともなにか勘付いたのか、つり革を掴む手が汗ばむ。



「なんだよ、なにか言いたそうだけど」


自分からそう聞くと、理紗は「なんでもない」と言って目を伏せ、それ以上なにも聞いてこなかった。

もしかしたら理紗は気付いているのかもしれないな。
俺の態度に速攻で大和も気付いたのだから、理紗もきっとなにか感じているのだろう。



窓の外に視線を移すと、見慣れたビルが現れた。

ボーリングやゲームセンターやカラオケなどが入っている施設で、何度も行ったことがある。

雪下さんもゲームとかするのだろうか。誘ったとしても、悩む間もなく首を横に振っている雪下さんが浮かんだ。



地元まであと一駅というところで理紗が顔を上げ、鞄の中から取り出したスマホを眺めている。


「ねぇ」

スマホを見つめながら理紗が口を開いた。俺に言っているんだろう。


「ん?」

「明日、一緒に学校行かない?」


「……は?」