高校から地元の駅までは五駅。一本だから楽だし、近い方だろう。

朝の電車は満員というほどではないが、それなりに人は沢山いて座れることはまずない。

帰りの車内はというと、朝とは違い所々空いている席があるが、俺は殆ど座ったことがない。


今日も席はいくつか空いていたが、俺は座らずにつり革に掴まりながらボーっと外を眺めていた。



雪下さんが転校して来てから一週間、成果はなし。

どれだけ話しかけても相変わらず俺にだけ素っ気ない。

話がつまらないのかもしれないが、それにしたって冷た過ぎる。

なぜそんな態度なのか分からないが、雪下さんが俺を良く思っていないことだけは確かだ。



「なーんか元気ないけど、どうしたの?」


目の前に座っている理紗が俺を見上げた。

そう言えば今日は理紗が一緒だったんだ。


「別に……」



俺と理紗は家が近所で、子供の頃はよく一緒に遊んでいた。親同士も仲が良い。

同じ高校を受験すると知った時は少し驚いたが、ここまできたら高校が一緒だろうが大学が一緒だろうが理紗が近くにいることが自然過ぎてなんとも思わなかった。

気も遣わないし、お互い空気みたいな存在なのだろう。


家は近いが朝は出る時間が違うため一緒の電車に乗ることはあまりないが、帰りは理紗の部活がない日は時々こうして一緒になる。

勿論一緒に帰ろうなどと約束するわけではなく、たまたまだ。



「悩みがあるなら相談にのるよ?」

眉を潜めて俺を見上げる目から心配してくれているのが伝わったが、俺は「なんもねぇよ」と答えた。

さすがに雪下さんのことは相談出来ない。