私達だけで森の中でキャンプをするなんて言ったら反対されるかもしれない。いくら森美町のみんなが全員顔見知りとはいえ、絶対安全とは言い切れないからだ。
だから私達は悟朗さんにお願いをした。高校最後の思い出、そして森美町を離れる前にどうしてもここで四人でキャンプをしたいと。
悟朗さんは『ちゃんと自分たちで親を説得できたらな。ま、俺が神社に寝泊まりするからって言ってもいいぞ』そう言ってくれた。
勝手に火を使わないとか夜中に森の中に入らないとか当たり前の条件は色々言われたけれど、結局親が許してくれたのは、悟朗さんが側で寝ているということが大きかったのだと思う。
興味あり気に眺めながらテントの周りを一周した後、悟朗さんは夜にまた来ると言って一旦神社を後にした。
「今何時だ?」
「もうすぐ十二時だけど」
「予定より遅れてるな。今頃お昼ご飯を食べてるはずだったのに。急いで準備しよう」
慌てている真人の横で、遥は背負っていたリュックからタッパーを取り出してゆっくり並べた。
「あのねー真人、なんでもかんでも時間通りにできるわけじゃないの。予定は未定、そういうのもキャンプの醍醐味なんだから」
「分かってるけどさ」
「分かってるなら気にしない気にしない。あ~あ、心配だな。人で溢れた都会で真人がちゃんとやっていけるのか。都会の電車はよく止まったり遅れたりするってお母さんが言ってたよ。その度にソワソワしてたらきりないんだから」
「大丈夫だよ。慣れればなんてことない」
「ほんとかな~?」
キッチリしている真人と大雑把な遥、正反対の二人だけれど、これが何故かとても息が合う。それぞれ形は違うのに、ピッタリはまるパズルのピースみたいだ。