私のもう一人の幼馴染、白石(しらいし)真人。私の家の右隣が遥の家で、その隣に真人の家がある。


茶色い屋根の二階建て一軒家で、橘家ほどではないけれど真人の家も結構大きい。というか田舎だからか土地も安くて広いし、二世代三世代で住んでいる人が多いからか、真人の家に限らずこの辺はどの家もある程度の広さがある。


真人の家にも当然畑があって、八十歳を過ぎたというのに全然背中が曲がっていない真人のお爺ちゃんとお婆ちゃんが、今も現役で畑仕事をしている。ちなみに森美神社の管理をしているのは、真人の伯父さんだ。



「え?これマジで真人が一人でやったの?」


テントの中と外をまじまじと眺めながら遥が聞くと、背が高くサラサラの黒髪に黒縁の眼鏡をかけている真人は、自信ありげに腕を組みながら頷いている。

神社の裏手に張られた三角形のテントは想像していたよりも大きくて、四人なら余裕で入れそうだ。



「不器用な真人のことだから苦戦してると思ったけどね」

「あのな、こういうのは力や器用さというよりも、ここを使うんだよ」

真人は自分の頭を指差し、またもや得意げにニヤリと笑った。


その言葉通り、真人は昔から頭がいい。成績は常にトップで私達にもよく勉強を教えてくれて、特に高校受験の時なんか、感謝してもしきれないほど私も遥も真人にはお世話になった。

真人がいなかったら、四人で同じ高校に合格することは出来なかったかもしれない。


各学年に一クラスしかなかった小学校では何度もクラス委員を務め、高校では生徒会にもなり、真っ直ぐで正義感が強い真人。


真面目だけれど不器用な真人は、四年生までとても大人しかった。本が好きなところは私と似ているけれど、私と違って真人は友達の輪に自分から入っていくのがあまり得意じゃなかった。


学年は関係なく全員の顔と名前が分かるほど森美町は子供の数が少なかったけれど、そんな環境の中でも真人は幼馴染の私と遥意外とはなかなか打ち解けられずにいた。

いつも女の子二人と一緒にいる真人をからかう友達もいたけれど、それを変えてくれたのが、そうちゃんの存在だった。