私、川瀬(かわせ)あかりには、二人の幼馴染がいる。
山の麓の集落の一角に、三軒連なる私達の家。その中で一番大きな平屋が、私の大親友、橘(たちばな)遥の家だ。五年前に二世帯住宅に建て直し、元々大きかった家が更に倍近く大きくなった。
建て替えの時に瓦屋根が無くなった代わりにソーラーパネルが設置され、白い壁は五年経ってもまだ綺麗なまま。裏の畑では玉ねぎやじゃがいもなどの野菜を育てていて、畑の他にも近くに田んぼも持っている。
一階の真ん中にはドアが左右に一つずつあって、右側には遥のお婆ちゃんとお爺ちゃんが住んでいて、遥と両親は左側だ。
遥といつ仲良くなったのかと言われたら、正直覚えていない。というのも、物心ついたころから常に一緒にいたからだ。
天然パーマの遥は、クルクルと巻いたようなその髪の毛がとても可愛くて、目がパッチリしていて睫毛が長く、小さい頃の写真を見るとまさにお姫様そのものだった。
成長するに従って天パは段々と緩くなってきて長さも胸の辺りまで伸びたけれど、その可愛さは今でも変わっていない。
それに加えて今は身長が百六十七センチあり、手足も長くて細い。小学校までは私の方が背は高かったはずなのに、中学でグンと背が伸びた遥に、百五十九センチという平均身長の私はいつの間にか追い越されてしまった。
身長だけじゃなく、私の容姿も普通そのものだ。肩下十センチくらいまで伸びたストレートの黒髪に、どこにでもいそうな特徴のない顔立ち。小さい頃の写真を見ると一発で私だと分かるくらいあまり変わっていないし、つまりいつまでも子供っぽいというわけ。
そんな私とは違って見た目はお嬢様風で綺麗な遥だけれど、性格は真逆かもしれない。と言うと聞こえが悪いけれど、あくまでいい意味での真逆だ。
間違っていると思ったら相手が誰であろうとハッキリと自分の意見を言い、負けず嫌いで気が強く、子供の頃は木登りが誰よりも上手くて活発で、そしてなにより友達思いで優しい。
男子が女子をからかったりしたら、一番に前に出て庇ってくれる。遥はそんな子だ。
高校生になって少し大人びたところもあるけれど、根本はなにも変わっていないと私は思っている。
そんな遥の将来の夢は、モデルになることらしい。正直、今テレビや雑誌に出ているどんなモデルさんよりも、遥が一番綺麗だ。