柔らかでオープンに見えるあなたの心の中の、硬く閉ざした部分。久人さん自身でさえ開けかたを忘れてしまったその場所に、そっと耳をあてて中の声を聞きたいです。

あなたの代わりに、救い出してあげたいです。

この間、私が男の人といるのを見たあなたが、ちらっとのぞかせた、素の感情。樹生さんに見せた姿。それが私に、信じさせてくれます。

私には、あなたの心に手を差し伸べる資格があるって。

ねえ久人さん、私、そう思っていていいですか?




「高塚さ──あれ?」


執務室に入ってきた次原さんが、私以外に誰もいないのを見て取り、きょろきょろする。


「どうしても外せないアポがあるとのことで、先ほど出ていかれました」

「慌ただしいですねえ」


まったくだ。

ため息をついた次原さんが、持っていた封筒の行き場を探し、デスクを見る。

久人さんの頼みで、彼の顧客リストをPC上で整理していた私は、手を止めてそれを受け取った。


「二時間で戻るとのことでしたので、お渡ししておきます」

「中身を見ないでくださいね」

「え!」


まさしく中身を確認しようとしていたところだった。慌てて封筒から手を離し、仕事をしていたローテーブルに置く。

でも、あの、秘書にも内密の書類って、気になります…。

制止されはしたものの、次原さんの様子に深刻さは感じられなかったので、私は尋ねてみた。


「秘密のなにかですか?」

「女性関係の調査結果です、高塚さんの」

「えっ」


それ、言っちゃっていいの?