「よろしく。楽しく過ごそうね」

「はい、よろしくお願いします」


にこっと笑った彼が、手を握り替えて、私の手の甲にキスをする。触れるか触れないかの、気持ちのいい挨拶のキス。


「俺、けっこう幸せにすると思うよ」

「私も、幸せになると思います」

「してもらわなくてけっこうですって意味?」

「与え甲斐がありますよって意味です」


お互い、探るように相手の目を覗き込んで、吹き出してしまった。

今度こそ久人さんは、私の手にはっきりと唇を押しつけ、礼儀作法を超えたキスをくれた。いたずらっぽい視線が、私が嫌がっていないことを確認してくる。

ちっとも嫌じゃない。

笑い返すと、向こうも笑顔になった。



うん、決めた。

私はこの人と結婚する。

そして幸せになる。