「今後は、久人さんに関することは、一番に聞きたいです」

「ん、それは…できるかな…」

「実際は難しいこともあると思います。ですから、私がそう望んでいるということを心に留めて、尊重していただければ、それでいいです」


一度困った顔をした彼は、私の希望をじっくり咀嚼するみたいに、しばらく考え込み、やがて「わかった」と深々とうなずいた。


「約束する」

「ありがとうございます」

「その代わりっていうと、あれなんだけど。お前も約束して」

「はい?」


渋々といった感じに、久人さんがすねた声でつぶやく。


「俺以外の男と、あんまり親しくしないで」


あらまあ。

私はなんだか驚いてしまって、返事するのを忘れた。唖然というか、呆然というか、開いた口がふさがらないというか、そんな感じだ。

私の状態を見て取った久人さんが、むっと不機嫌な表情になった。


「約束するの、しないの?」

「あっ、あの、します、もちろん。でもさっきの方は、転職エージェントのアドバイザーさんで…」

「だからなに? 泣きながら仕事の不満でも聞いてもらってたわけ?」

「泣いてたのは、久人さんのせいですよ…」


久人さんが「わかってるよ、そんなの」と噛みつく。もう、この人、こんな子供みたいになる人だったのか。


「約束します。でも久人さんも信じてください」

「なにを?」

「私は久人さん以外の男の人に、心が動くことは、ありません」


彼を正面から見据え、はっきりと言った。

久人さんの目が驚きに見開かれ、それから和らぐ。照れながら「うん」と笑う顔は、はじめて見る表情で、子供っぽくもあり、彼らしくもある。


「信じる」