色とりどりの野菜と肉、魚を並べてグリルした、簡単だけど見た目が華やかなメインに、事前に作っておけるマリネサラダ。久人さんが一週間、みっちり作り方をコーチしてくれたリゾット。


「あーやっぱり。久人の味だと思ったんだ」

「デザートはがんばったんです。お菓子は昔から作るので」

「どれもおいしそうだなー。運ぶよ、きみは飲み物をお願い」

「はい」


ガトーショコラ、どら焼き、フルーツカクテルというてんでんばらばらのスイーツが載ったトレーを、樹生さんが軽々と持ち上げ、ダイニングへ向かう。

私は紅茶とコーヒーの用意をして、後を追いかけた。


「事業のほうはどうなんだ、久人」

「今力を入れているところは、順調です。あと少しで軌道に乗りますね」

「小難しい話はやめてちょうだいよ、男の人ってすぐそうやって、たいした人物ぶろうとするのよね。ああ子供っぽい」


食事が終わり、テーブルではそんな会話がくり広げられていた。


「本当に、男はくだらないものですね、千枝伯母さん。気分を変えて、ほら、桃子さんの心のこもったデザートですよ」


樹生さんがテーブルの真ん中に置いたトレーは、歓声と共に迎えられた。お義父さまも相好を崩しているのを見て、ほっとする。


「私がどら焼きなんてものを好きだと、だれかがばらしたんだね」

「こしあんで作ったんです。いつも苦労してお探しとお聞きしたので。お茶をご用意しましょうか?」

「いや、コーヒーと一緒にいただくのが、また自慢できない嗜好でね」


麻のジャケットでいらしたお義父さまは、還暦を迎えたところで、白いものが混ざりつつある髪を清潔にカットし、おしゃれでハンサムで、俳優みたいだ。

「ガトーショコラは私の好きなものね!」と明るい声で笑うお義母さまは、お義父さまより少しお若く、落ち着いた美貌と明るいお人柄の、かわいらしい方。

ビュッフェタイプのスイーツは、全部がミニサイズで、数がたっぷりある。おふたりとも健啖家で、またたく間にトレーは空になり、私は大喜びした。