私の両親を、久人さんのご両親に会わせてあげたかった。なんてすてきな人たちのもとへ嫁げたのかと、喜んだだろうに。


「たくさんありますね」

「あーでも、やっぱり、もう少しゆっくりでいいな」


急に調子が変わったので、何事かと彼を見上げる。意味ありげな微笑みが、私を見返した。


「しばらくは、ふたりで過ごしたいよね」


私も笑い返した。

はい、私もそう思います。


「腹減ったねー」

「もうすぐですよ」


繋いだ手を、くいと引かれる。

足を止めて、誰もいない道端で、笑いながらキスをした。


「好きだよ、桃」

「私もです」

「俺から離れちゃだめだよ」


甘えているんだかいばっているんだか。

久人さんらしい言いぐさに、私は盛大に噴き出し、首に抱きついてキスをねだった。仕方ないなあ、という感じで、望んだとおりのものを彼がくれる。

はい、離れません。

だって私たち、これから恋をするんです。

もう結婚もして、夫婦生活も始まっているけれど、全部これから。お互いのことをひとつひとつ知って、もっと好きになって、もう一度誓うの。


「なに笑ってるの」

「幸せなので」


人目がないのをいいことに、しっかり抱き合ってキスをした。日差しに温められた身体から、久人さんの香りがする。

ずっとずっと、寄り添って歩くの。

そして誓うの、もう一度。


幸せになりますって。









Fin

──Thank you!