きまり悪そうな微笑みから、本音なのだと伝わってきて、ほっとした。

それならよかった。

安心すると同時に、身体の力がうまい具合に抜けて、久人さんと溶け合う。なめらかな二の腕をたどり、背中に抱きつくと、頭を抱きしめ返してくれた。


「あの、私、大丈夫そうなので」

「うん?」

「久人さんも、その、好き? に…?」


好きに、なにして、と言えばいいのかわからなかった。ただ、彼が今、私のためにじっとなにかを我慢しているような気がしたのだ。

腕の中で、久人さんの体温が上がった。

また笑っているのかなと思ったのだけれど、違うみたいで、右手が動いて、私のわき腹や腰をゆっくりなで、私の左脚を、引き寄せるみたいに折り曲げた。

普段、絶対に服に隠れている、腿の内側。その薄い皮膚の部分で、久人さんの体温を感じると、ぎくっとする。同時に胸が高鳴る。

もう一方の手が、背中の下に回って私を抱き寄せた。なんだろう、それまで抱きしめられていたのと、まったく別の感覚。

優しく甘やかされていた懐の中から、抵抗を許されない場所に引き出されたような。

身体がぴったりと重なる。久人さんの、肌の下で脈打つ鼓動を感じる。

私の喉をそらせるようにして、久人さんがキスをした。

当然のように舌は絡み、このキスが挨拶でも親愛の情の表現でもなく、彼には私の身体を自由にする権利があると、知らせるためのものであるのを感じる。

今、久人さんが、男の人だ。

いつもふわっと優しい彼にも、こんな猛々しい一面があって、今からそれを私に見せてくれようとしているんだ。

そう思うと、嬉しかった。

見たことのない、熱を帯びた表情で、久人さんが微笑んだ。


「じゃあ、遠慮なく」


熱を宿した目つきだとか、軽く上気した肌だとか。首筋から肩にかけてのラインだとか、それを見上げているこの体勢だとか。

そういうすべてに心を奪われた。

揺さぶられ、内側をこすられる。私は正しい反応がどういうものなのかわからず、ただ次第に汗に濡れていく久人さんの背中が嬉しくて、それがないと心細くて、ずっとしがみついていた。