こうなったら、お手本を見せなければ、という妙な自尊心が湧いてきて、私は必要以上にきっぱりと返事をした。


「はい、信じます」


意図が伝わったのか、久人さんが不意打ちをくらったみたいにきょとんとする。

それから困ったように笑い、私をふんわり抱きしめ、耳もとでささやいた。


「怖がらないでね」




ほんとにこれで、大丈夫ですか?

合ってますか?

想像の遥か斜め上をいく感覚に、私は軽くパニックを起こしていた。


「ひ、久人さん…」

「ん、痛い? どした?」


震えながらしがみつく私の頭を、よしよしとなでてくれる。

痛いです、もちろん。でも痛みより、どちらかというと衝撃のほうが大きいです。自分の身体になにが起きているのか、よくわからない。


「あの…」

「苦しい?」


その表現のほうが近い気がして、私はこくこくとうなずいた。だけどすぐに首を横に振った。久人さんが気を使って、中断してしまうのではと思ったからだ。

浅はかな考えは筒抜けらしく、噴き出す声が聞こえた。


「桃がもう無理だって言うまでは、やめないよ、安心して」

「こ、これで、いいんですか?」

「ん?」

「久人さんは…」


少し身体を離して、私の顔を見下ろす。この状態で、まともに目を合わせるとそれはそれでまた恥ずかしくて、私は顔が赤らむのを感じた。

またしても久人さんは、察してくれた。


「ごめんね、俺はしっかり気持ちいいよ」