「自分の価値に不安がありますか。でもそれと、お義父さまの愛情を疑うのとは別です。お義父さまを尊敬しているなら、お義父さまに選ばれたご自分をもっと、信じてあげてください」

「信じて、るよ」

「後継ぎとしてでなく。久人さん自身が、お義父さまに愛されていると信じていただきたいんです」


また黙ってしまう。

うつむいたきり、こちらを向いてくれないので、私は彼の正面にひざまずき、下からのぞき込んだ。


「お義父さまは、血が繋がっているからという理由だけで、久人さんよりもうひとりの息子さんを贔屓するような方ではないと、私は感じます」


久人さんは目を合わせず、手紙を見つめている。


「そんな方だったら、久人さんがここまで尊敬するはずない」


彼の瞳が、少しだけ、はっとひらめいた気がした。私は彼の手を握り、言葉を吸収してくれますようにと願った。


「私がお義父さまのなにを知っているんだと思いますか? 知りません。久人さんのほうがよくご存じです。ずっと近くにいたんだもの!」


伝わりますように。


「私が信じているのは、久人さんです」


今度こそ、久人さんの表情に、なにかが表れた。


「わかりますか、信頼ってそういうものです。繋がってるんです。自分を信じきれなければ、自分へ向けられる愛情も信じられない」


はっと視線が動きだし、さまよって、こわごわ私のほうを向く。


「少し変わるだけで、お義父さまのお気持ちが見えるはず」


がんばって、久人さん。

お義父さまへの信頼が揺れて、つらいんじゃないですか。それは違います。久人さんが信じていないのは、ご自分のことです。

自分を信じてみてください。

そうしたら、もっと信じたいものが、見えてきます。