「あの、…ええと?」
『里子に出されていたんだ。伯父さんと伯母さんの結婚は、実はそうすんなりはいかなかった、高塚の黒歴史でね』
「ごめんなさい、待ってください、お義父さまのお話ですよね? 本当の子供っていうのは、つまり…」
『伯父さんと伯母さんの実の子だよ。亡くなっていたっていうのは事実じゃなかった。一族の手で、伯父さんたちから引き離されて、別の家に養子に入っていたらしい。伯父さんたちはずっと、ひそかに行方を追っていたんだ』
「久人さんが、それを知ったんですか」
なにかが頭上から落ちてきたようなショックだった。
敬愛する両親の、亡くなった子の代わりに生きるのだと決めた久人さん。それを誇りに生きてきた人。
だけどその子は生きていた。
ご両親もそれを知っていて、しかも、ずっと探していた。久人さんに内緒で。
そして、見つかった。
久人さん…!
樹生さんがささやくような声で『そう、知ったんだ』と苦々しく言った。
『商社のポンコツ秘書を全員クビにして、桃子ちゃんを入れたいよ。久人は今、伯父さんの補佐的な立場で商社の仕事もしてる。絶対に久人に渡っちゃいけない書類を、アホな秘書がほかの書類と一緒に渡したんだ。下読みするのも久人の仕事だからね、当然あいつは読んだ』
そういえば今日は、ファームの仕事が終わってから、どこかへ寄ると言っていた。商社に行っていたんだ。
『俺はその場にいなかったんだ。聞いたところでは、久人はその後も普通に仕事をして、帰ったらしい。その後で伯父さんが出先から戻ってきて、報告書の封が開いているのを見つけた。秘書は久人に渡したと言った』
「お義父さまは、どうしてらっしゃるんでしょう…」
『まず俺に連絡してきた。俺も子供は亡くなってたと信じてたからね、驚いたけど、それより久人だ、となったよ。伯父さんも、相当慌ててたとは思うけど、それを出すような人じゃない。心の底は、俺にも読めない』
「そんな…」
たぶん久人さんは、お義父さまからの連絡が来るのが嫌で、携帯の電源を切ったのだ。自分が真実を知ったことを、隠す方法もなかった。
胸に置いた手に、鼓動がぶつかってくる。
『里子に出されていたんだ。伯父さんと伯母さんの結婚は、実はそうすんなりはいかなかった、高塚の黒歴史でね』
「ごめんなさい、待ってください、お義父さまのお話ですよね? 本当の子供っていうのは、つまり…」
『伯父さんと伯母さんの実の子だよ。亡くなっていたっていうのは事実じゃなかった。一族の手で、伯父さんたちから引き離されて、別の家に養子に入っていたらしい。伯父さんたちはずっと、ひそかに行方を追っていたんだ』
「久人さんが、それを知ったんですか」
なにかが頭上から落ちてきたようなショックだった。
敬愛する両親の、亡くなった子の代わりに生きるのだと決めた久人さん。それを誇りに生きてきた人。
だけどその子は生きていた。
ご両親もそれを知っていて、しかも、ずっと探していた。久人さんに内緒で。
そして、見つかった。
久人さん…!
樹生さんがささやくような声で『そう、知ったんだ』と苦々しく言った。
『商社のポンコツ秘書を全員クビにして、桃子ちゃんを入れたいよ。久人は今、伯父さんの補佐的な立場で商社の仕事もしてる。絶対に久人に渡っちゃいけない書類を、アホな秘書がほかの書類と一緒に渡したんだ。下読みするのも久人の仕事だからね、当然あいつは読んだ』
そういえば今日は、ファームの仕事が終わってから、どこかへ寄ると言っていた。商社に行っていたんだ。
『俺はその場にいなかったんだ。聞いたところでは、久人はその後も普通に仕事をして、帰ったらしい。その後で伯父さんが出先から戻ってきて、報告書の封が開いているのを見つけた。秘書は久人に渡したと言った』
「お義父さまは、どうしてらっしゃるんでしょう…」
『まず俺に連絡してきた。俺も子供は亡くなってたと信じてたからね、驚いたけど、それより久人だ、となったよ。伯父さんも、相当慌ててたとは思うけど、それを出すような人じゃない。心の底は、俺にも読めない』
「そんな…」
たぶん久人さんは、お義父さまからの連絡が来るのが嫌で、携帯の電源を切ったのだ。自分が真実を知ったことを、隠す方法もなかった。
胸に置いた手に、鼓動がぶつかってくる。