壷井さんの帰り道は正門からのはずなのに、なんでわざわざ裏門から出て行ったんだろう。ちょっとだけ、森田の情報を疑いながら俺も裏門から飛び出した。
今更だけど、なんで壷井さんの連絡先を聞いておかなかったんだろうと後悔する。
また誘うつもりだったんだから、電話番号でもメールでもいいから、聞いておけばよかった。
壷井さんは、他の子とは違う。
俺から繋がろうとしない限り、勝手に繋がったり、今どこにいて何をしてるかすぐにわかったりしない。
そのことが、こんなにも不便で歯がゆいなんて思いもしなかった。
俺が知っているのは、壷井さんの、ナナの日記だけ。
壷井さんと俺が繋がれるのは、ナナとミキとしてだけで、壷井さんのことが知りたければ俺から繋がるしかない。
裏門から駅に通じる道をきょろきょろと探しながら走った。
「くそっ……、逃げ足速え……」
もう電車に乗ってしまったかもしれない。俺はそういえば、壷井さんがどこに住んでいるのかだって知らない。どこ行きの電車に乗って、どこで降りるのかも知らない。
勝手に日記を読んでいるだけで、壷井さんと繋がった気になっていたのは俺だけだったんだ。


