もっと彼と話がしたい。
俺も、もっとナナと、壷井さんと、話がしたい。
ナナが、壷井さんが苦しいって書くと、俺も胸が苦しくなった。
彼女がドキドキしたって書くと、俺も今日のことを思い出して胸がドキドキした。
壷井さんの横顔、帰り際の、壷井さんの柔らかい笑顔。
いまこうやって、彼女の日記を読んでいるのは罪にはならないのだろうかと考える。
ナナが、壷井さんだと知っていて、ナナの日記を読むのはいけないことなんじゃないか。
たとえ公開されている日記でも、これは盗み読みしてることになるんじゃないか。
壷井さんが、ナナが、俺を思う気持ちが綴られた日記は、まるで甘い禁断の果実みたいに魅力的で、だから俺は、それを読まずにはいられなかった。
彼が好きなあの子、それって多分、七瀬さんのことなんだろう。
違うよナナ。
俺が好きなのはきみのその言葉のひとつひとつで、俺が好きなのはきみのその優しさで、俺が好きなのはきみのその、生真面目でときどき無邪気な性格で、だから。
俺が好きなのはきみだよ。
今、やっとわかった。
顔なんか見たことがなくたって、俺ははじめからきみのことが好きだったんだ。


