俺はもう、ミキとしてナナに返事をすることなんて出来ないと思った。
ミキとして、ナナの相談になんて答えられないと思った。
ナナはミキに無視されたと思ってまた傷付いてしまうだろうか。
それでも、俺はもう、ナナに何も言えないと思った。
ナナに返事ができない代わりに、水槽の中できらきらひかる俺の自慢の水草の、アヌビアスナナの写真を撮ってブログに載せた。
アヌビアスナナが、水泡をぴかぴかとくっつけて生きている、まるで緑の宝石みたいに撮れた写真。
なにも文章は書かずに、ブログにはそれだけをアップして、ページを閉じた。
もう、嘘のブログは書けないと思った。
少なくとも、ミキとしてナナと会話することは出来ないと思った。
せっかく本音を語れるナナと出会えたっていうのに、自分の嘘のせいでそれを失うなんて寂しいけれど、自業自得だ。
傷つけてごめん、ナナ。
どうかせめて、アヌビアスナナに気付いてくれますように。


