「あの、わたし、電車だから……」
「そっか。じゃあ、駅まで送る」
校舎の四階にある図書室の窓から見える景色。日が沈んで暗くなりかけた空に、最近建った高層マンションの明かり、遠くに見えるショッピングセンターの看板。
窓のそばから真下を覗くとまだユニフォーム姿の野球部とラグビー部が部室あたりでうろうろしているのが見える。部活生以外でまだ学校にいるのはきっと俺たちくらいだろう。
完成した壁新聞をとりあえずスマホで撮影。俺の名前でグループラインに完成画像をアップすると、すぐに他のメンバーからの反応があった。
〈もうできたの?!てか上手くない?!〉
〈めっちゃ完成度高いじゃんすげー〉
〈これリーダーとサブリーダーだけでやったの?〉
〈ありがとうリーダー!〉
〈さすが壷井さんだよね〉
〈仕事早っ〉
〈やっぱパソコン使うと綺麗ー!リーダーサブリーダーお疲れ!!〉
「ほら見て。みんな喜んでるよな。ってか、みんなぜんぜん手伝わないくせして返事だけは早いのな」
メッセージが並んだスマホの画面を壷井さんに見せながら、そういえば、と思い出す。
「てか壷井さん、グループ入ってなくない?招待されてないってこと?」
壷井さんはすぐには答えない。通学バッグにペンケースや両面テープを片付けて、俺が見せたスマホをちょっとだけ覗き込んでみんなのメッセージを眺めたあと、完成した壁新聞を丁寧にくるくると丸める。
まるでみんなの反応になんか興味ないって言ってるみたいに俺には見える。


