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「やっぱり他のヤツにも手伝わせたほうが良かったかな。中岡も、あいつ俺が今日やるって知っててさっさと帰りやがったし」
ぶつぶつとぼやきながらテーブルに広げた模造紙、そこにA4サイズの記事を張り付けやすいように両手をついてぴんと伸ばす。
放課後の図書室には今日は俺と壷井さん以外の誰もいない。テーブルを挟んで目の前には壷井さん。プリントアウトした壁新聞の記事の裏面に、黙々と両面テープを張り付けている。
「他の女子も、無責任だよな」
手伝おうともしないとかさ、といいかけてやめた。
実は七瀬さんからついさっき、「わたしも手伝うよ」と言われて断ってきたからだ。
断ってから、自分の勝手さに驚いた。結局のところ俺は、今日は壷井さんと二人で作業したかったってことなのだ。
それに、あのナナの日記が引っ掛かっているのもある。
「わたしは、別に」
壷井さんは静かな落ち着いた声でいった。
別に、二人でもいいよって意味だといいなと思う俺。
「この記事、ここでいいかな」
「あ、いいじゃんいいじゃん。じゃあ写真はこのへんにしようか」
「そうだね。いいと思う」
「よし、じゃあもう貼ろうぜ」
両面テープの紙をはがして記事を壷井さんに渡していく。広げた模造紙に次々とレイアウトされていく、壷井さんの文章と、二人で選んだ写真。
記事のタイトルのフォントとかサイズも、二人で選んだ。壷井さんの文章は綺麗で、どの記事もすごくうまくまとまっている。


