ナナの長文コメントに対する返事を考えていると、部屋のドアがいきなり開く。

「ちょっと慶太!」

名前を呼ばれ、反射的に自分の背中でパソコンの画面を隠すようにして振り返る。開いたドアの向こうにいたのは最近めっきり母親と声が似てきた美貴だった。

「慶太、あんた、森田と仲良くしてるって本当なの?!今日のこと、あんたも知ってたんでしょ!」

「仲良くなんかしてねぇって」

誰に聞いたのか知らないが、きっと今日のサプライズに俺がいっちょ噛んでいるとでも思ってそれで怒っているのだろう。

「嘘ついてんじゃないわよバカ」

「いいじゃん、愛されてんじゃん姉貴。何回も告られてんだろ?もういい加減付き合ってやれば」

「あんたには関係ない!とにかくあいつと仲良くすんのはやめて!あんなことされて迷惑なんだから!」

ヒステリックに怒鳴りだす美貴に「はいはいわかった」と適当に返事をすると、バン!という音と共に部屋のドアが閉められる。俺の部屋のドアノブの調子がおかしいのは美貴のせいでもあるのだ。
せっかく野球部の後輩まで巻き込んで森田が考えたサプライズだったのに、姉貴の心には届かなかったらしい。
だけどあれだけ怒っているわけだから、一生忘れられない誕生日にするという森田の目的は達成出来たと言っていいだろう。