「そうだよ。だって、水嶋くんとは友達になるつもりはなかったんだもん」

七瀬さんはちょっと悪戯っぽく笑って言った。

「だけど、路線変更。まずは友達になって。理解してもらってから好きになってもらうことにする」

「……直球だね。その度胸、見習いたい」

「水嶋くんにだけだよ、こんなこと言うの。友達になるから、バイト先までこのままついていっていい?」

七瀬さんは甘えたような感じで俺の顔を覗きこんだ。

「友達に嫌だとは言えないってわかってて言ってるよな」

「ばれたか。水嶋くん、やっぱりするどいよね」

七瀬さんが笑う。

「勝手にどーぞ」

早足で歩き出す俺についてくる七瀬さん。さっきまで七瀬さんのペースに合わせていたせいで、はやくしないとバイトに遅れそうだ。

「走ってもいいよ。追いかけるから」

「じゃあ、お言葉に甘えて。遅れても放っていくからそのつもりで」

「やっぱ冷たいなー水嶋くん。でもそこがいい」

「はいはい。勝手にどーぞ」