「どういうこと」

なんだかちょっと腹が立ってしまったのはなんでだろう。「むしろそこがいい」なんて言われて嬉しくなってもいいはずなのに。
正門から出て午後の通学路を歩く。七瀬さんはわざとなのか、とてもゆっくり歩いている。

「わたしに興味なさそうなのがいいってこと。変に自己アピールとかしないとこ」

「は?」

「水嶋くんだけだよ、わたしが自分から、タイムライン見てなんて報告するの。みんなはそんなことしなくてもすぐに反応するしいいねもくれるし。わたしね、クラスの中の、どのグループにも入ってる。みんな招待してくれるから、みんながわたしのSNSも連絡先も知ってるの。だけど誰も、わたしに直接メッセージなんてくれない。変だよね?タイムラインのコメントとか、いいねはいっぱいくれるのに」

七瀬さんはちょっと残念そうに言った。
なんとなく、わかる気がする。七瀬さんは、みんなの七瀬さんだけど、誰かの七瀬さんじゃない。いつも誰かと一緒にいるけど、いつもみんなに囲まれてるけど、そのなかの誰も、七瀬さんと親友だなんて言えないと思う。

「別に、いいじゃん、人気者なんだし。贅沢な悩みだと思うけどな」

七瀬さんをフォローするつもりで言った。だけど、七瀬さんはなぜか怒った顔をする。

「人気者なんかじゃないよ。わたし」

「なんで?クラスで一番可愛いし、目立ってるし、自分でもそう思ってるだろ?」

言ってから、ちょっと言い過ぎたかもしれないと思った。だけどそれは、たぶん事実だと思う。
自分に自信がない奴が、あんなタイムライン投稿できるはずないし、躊躇なく男と二人で帰ろうなんて言えない。きっと。