放課後、携帯をチェックすると早速、森田篤からのメッセージが届いていた。
タップしなくても画面に勝手に表示される一行目。

〈これからよろしくな!我が弟よ!〉

「何だよ、弟って」

いかにもウザくて一行目から既に暑苦しいその内容に、既読をつけてしまうのが面倒で、メッセージの続きは確認せずに画面を閉じる。
各学年が一斉に動き出す下校時刻の渡り廊下に中庭からの砂埃が舞い上がる。


「水嶋くん」

背後から聞こえた、鈴が鳴るような声。振り返るとそこには、七瀬さんがいた。

思いもよらない人物に名前を呼ばれたのは今日で二回目。
七瀬さんに呼び止められる理由も、森田篤に呼び出される理由と同じくらいにわからない。

「…ええと、何?」

「あ、あのね、水嶋くん」

「うん?」

七瀬さんが少しだけ、言葉に詰まる。
二年間同じクラスにいたけれど、二人だけでまともに話したことはない。
席が近くなったときに何度か、それこそもう覚えていないくらいの他愛ないやりとりをした程度。

中庭に面した渡り廊下には下校する生徒と部活に向かう生徒が逆方向に通り過ぎていく。向かい合う俺たちに無遠慮な視線を投げ掛けては、声を掛けずに去っていく。