昼休み。
いつも通りに昼飯を食っていたら、クラスの奴らが騒ぎ出した。
男子も女子も、みんな窓際に集まって、外を見ながらなんだかざわざわとうるさい。それを見たほかのクラスメイトもみんな次々に窓際に集まっていく。
「えっなになに」
騒ぎに気付いた中岡が立ち上がる。それを見て、はっと思いだした。
〈昼休み、教室から校庭を見ること〉
森田だ。
食べかけの焼きそばパンを持ったまま、俺もいそいで窓際に走る。
俺たち普通科の教室のある校舎は旧館といって、床も壁も古く、エアコンは強か弱かしか選べない。校庭を挟んで向かい側の新館はスポーツ科と特進クラスが使っていて、館内のエアコンは全自動、トイレに入ると勝手に電気がついたりする。
旧館と新館に挟まれた校庭。日光に照らされてたぶん熱くなったグラウンド。そこに登場したのは、昼休みなのになぜかユニフォームに着替えた、野球部のメンバーたちだった。背番号に名前が書いてあるからたぶん一年生。
新館のほうを向いて横一列に並んでいる。
まるで試合前みたいにぴしりと並んだ彼らを見物しようと、新館側も旧館側も各教室から生徒が顔を出している。
どこからか、ピイーッ!と笛の音がして、それを合図に野球部の一年生たちが右手を挙げる。
旧館側から見て右側の坊主頭から順に動き出し、きびきびとした動作でいきなり校庭に寝転んだ。次々に寝転んでいく坊主頭たち。よく見ると、まっすぐだったりちょっと曲がっていたりとにかく一人ひとりきちんと寝転ぶ持ち場が決まっているらしい。


