学校に到着するなり森田から送られてくるメッセージ。

〈昼休み、教室から校庭を見ること〉

一瞬、は?と思ったけど、遅刻ギリギリだからなんのことだか聞き返せなかった。
疑問をポケットに押し込んで早足で教室へと向かう。

「慶太ギリじゃん。珍し」

中岡が興味ありげな顔で探ってくる。バカなくせに妙に人のことを観察していてするどい奴。

「さてはなんかあったな」

「なんもねえよ」

「嘘つけ」

「ねえって。しつこいな」

教室には、既に壷井さんもいる。いつも通り、姿勢が良い。背筋がすっと伸びている感じ。俺もつい、背筋が伸びる。

「あ、さては七瀬さんだろ」

小声で耳打ちされてぎょっとする。
七瀬さんはいつも通り、他の目立つ女子に囲まれて教室の窓際にいる。

「なんもないって」

答えながら顔に出さないことで必死だ。

中岡には、ブログのことはもちろん俺がアクアリウムにはまってるってこともほとんど話したことがない。まして、ナナのことなんて話せる訳がなかった。
遅刻ギリギリの理由はナナと壷井さんのことで眠れなかったこと。
それに今日、七瀬さんと帰ることになったこと。
こんな話、中岡にしたらそれこそ大変なことになる。

ドアが開いてタケノコが教室に入って来ると、騒がしかった教室が少しだけ静かになった。