ほとんど眠れないまま迎えた朝。

無意識に携帯に手が伸びる。画面には、新着メッセージの文字。

ひとつは七瀬さん、もうひとつは森田から。

〈今日、一緒に帰らない?〉

〈おはよう!今日は美貴ちゃんの記念すべき十八回目のバースデーやな!俺のサプライズ、成功するように祈っててくれ!〉

朝からかなりヘビー。

返信に困るメッセージが二件、しかも寝ぼけてうっかり開いたせいで、どちらも既読をつけてしまった。

「……めんどくせ」

呟きながらも指先は動き始めている。

〈今日はバイトあるからごめん〉

〈サプライズ、頑張ってください。まさかほんとにお年玉あげるって訳じゃないっすよね〉

まだ頭が動いていなくても、指先が勝手に文字を並べる。七瀬さんのほうにはご丁寧に〈ゴメン!〉と謝るアニメキャラのスタンプまでつけて、送信までの流れはもうほとんど全自動だ。

どっちもすぐに返事が来る。

本当は、こんなことしてる場合じゃない。
はやく学校へ行く準備をしなくちゃならないし、頭の中は壷井さんとナナのことでいっぱいだ。何も解決策が見いだせないまま迎えた朝は、俺の脳みそを置き去りにしてどんどん時間がすぎていく。