〈ナナさんへ

ナナさんは、きっと誰かの役に立っていると思う。
少なくとも、わたしはナナさんとこうしてやり取りするのが楽しみになっているし。
近くにいる友達には照れ臭くて話せないようなことも、なぜだかナナさんに向けて書くとすらすら話せてしまうから不思議です。

ナナさんに報告。今日はひとつ、ちょっといいことがありました。
普段、あまり笑顔が見られない子の笑顔が見られたこと。
なんだかちょっぴりどきっとして、得した気分になりました。
彼女はナナさんと共通点が多いかも。

その子はなんとなく、アカヒレに似ています。
あまり目立たないし主張しないんだけど、環境適応能力があって、実はすごく強い子だと思う。
あ、ナナさんにこんな話をしても困っちゃうか。

ミキ〉


偶然が重なったことで、ナナの存在と壷井さんの存在がどうしても重なってしまう。

だからなのか、俺はナナに今すぐにでも壷井さんのことを話したい気持ちになっていた。

自分の部屋でパソコンに向かうとすぐにキーボードを叩く。変にテンションが上がって、つい自分が『ミキ』だってことを忘れそうになる。
ナナにこんなことを話しても仕方がないとわかっているのに、どうしても話さずにはいられなかった。