「か、可愛い名前じゃん」
何とか言葉を繋いでみたけれど、声がうわずってしまった。
「嘘、安易なネーミングだって思ったでしょ。さ、新聞の続き続き」
壷井さんは照れ隠しみたいにパソコンに向き直った。不思議な偶然にびっくりしたけど、そういえばこんな風に壷井さんと話すのは初めてだった。いつもはおとなしくて静かな壷井さん、主張しない性格だから目立たないけど、頭がいいからみんなにちょっと一目置かれている感じ。
だけど今日は、ちょっと違う。
自然な感じで笑ったり、照れたりする壷井さんの姿をきっと他の奴らは見たことがないだろう。
そう思うだけで、なんだかちょっと得したような気分になった。


