「似合ってる」
つい思ったことを言ってしまう俺。言ってから恥ずかしくなって、「えっ」と言う壷井さんをスルーして新聞の話を進めていく。
「この写真の記事と、この写真の記事をメインにしたら、いい感じじゃないかなと思うんだけど」
「うん、いいと思う。目立つし、校外学習の雰囲気も伝わりそう」
編集長の壷井さんがいい返事をくれたので、俺はさらに調子に乗る。
「あと、これとこれは二枚でいっこの記事にして、大きめにプリントして使おうよ。場所かぶってるけど、どっちもうまく撮れてるし」
「うん、じゃあこのままこのパソコンで、記事書いちゃうね」
壷井さんは俺の提案通りに画像を貼り付けて、リズミカルにキーボードを叩き出す。このスピードなら、今日だけで作業は終わりそうだ。
「じゃああと、この写真とこの写真、セピアに加工して使うってのはどう」
「あ、それいい!」
俺の提案に、壷井さんが思いのほか食いついてくれて嬉しくなった。
ちょっと古い民家が並んでいるのを撮った写真。誰が撮ったのか忘れたけれど、いい雰囲気で撮れている。セピアに加工したらかっこいい記事が書けそうだと思ったのだ。
「だろ?!ただの提出課題だからって、手抜きするよりいいもん作ってびっくりさせたいよなって思って」
聞かれてもないのに偉そうなことを言ってしまう俺。だけど壷井さんはうんうんと頷いてくれている。
キーボードを叩く指が心なしか楽しそうに見えるのは、俺の勘違いかもしれないけれど。


