放課後、なかなか空にならない教室でそのままっていうのも集中できそうにないってことで、俺が強制的に壷井さんを図書室に呼び出した。この学校の図書室は付属の大学の図書室と連携していることもあって、かなり広い。
静かだし、適度に人もいて、司書のおばちゃんもいい人だ。自由に使えるパソコンもあるから、記事を書くのにちょうどいい。

俺が図書室によく来るなんて話は中岡でも知らないことだけど、もともと読書は嫌いじゃないし、広くて居心地のいいこの場所はテスト前の自習なんかにはもってこいの場所なのだ。

重い扉を開けて図書室に入ると、壷井さんはもうすでにそこにいた。何冊か本を手にもっていたから、ちょっと待たせてしまったのかもしれない。

「ごめん、俺が呼んだのに遅れた」

「ううん、大丈夫」

小声で返事をする壷井さん。俺がパソコンのある席を指さすと、うんと頷いた壷井さんはそのまま俺にとことことついてきた。

パソコンの画面に向き合って、ふたりで並んで椅子に座る。壷井さんが眼鏡を取り出してかける。

「あれ、壷井さんて眼鏡だっけ」

「あ、普段はコンタクトなんだけど、今日はちょっと目の調子がよくなくて」

ちょっと恥ずかしそうに俯く壷井さんは、ふちなしの細い眼鏡がよく似合っている。度なしのおしゃれ眼鏡みたいなやつより、こういうタイプのほうが壷井さんらしい。