「え、まじで?」
ぎょっとしたような顔で中岡が叫んだ。俺がそんなこと言いだすなんて思ってなかったんだろう。七瀬さんも、他の女子も、ちょっとびっくりした顔でこっちを見ている。
ずっと下を向いていた沈黙のリーダー壷井さんは、いつのまにか目を見開いて顔を上げていた。
「そのかわり、みんな協力しろよ。校外学習で撮った写真、持ってるやつはとりあえず全員俺に送っといて。写真と一緒にコメントも。どのルートで回ったのか皆違うだろうし、自由時間に行ったとことかも違うはずだから、最低でも6通りは違うネタ出てくるだろ?十二人もいるんだから」
みんな、うんうんと頷いている。面倒な提出物が手っ取り早く片付くためだ。誰もやりたくないんだから、それなら全員やるしかない。
「俺がみんなが送ってくれたやつまとめて、その続きの文章考えたりするのは壷井さんにお願いする。で、パソコンで画像貼って記事作ってプリントして、それを順番に模造紙に貼っていくってのはどうかな。手書きだと、広い場所もいるし時間もかかるから」
「よっ!さすがサブリーダー」
中岡が茶化してくる。うるせ、と中岡の椅子の脚を蹴る。
「リーダー、そんな感じでいいっすか」
俺が壷井さんの顔を覗き込むと、壷井さんはちょっと考えるような顔をして、小さな声で「うん」と答えた。
沈黙のリーダーが今日初めて喋ってくれたことに少しほっとする。嫌なら黙って何も答えないはずだから。
「じゃ、解散てことで」
やっと終わったとばかりに中岡が立ち上がる。みんなも「良かったねー」なんて言いながら昼休みの教室や廊下に散っていく。壷井さんが何か言ったような気がしたけど、声が小さすぎて俺には聞き取れなかった。


