苔の発生し始めた水槽の水をポンプで掃除して、よその水槽からオトシンクルスを移動してやる。
苔を食べてくれる可愛い見た目の賢いやつ。ついでに伸びてきた水草をカットして整えていく。水槽に手をかけ始めると時間を忘れてしまうけど、それ以外のことをあまり考えずに済むメリットがあるから、頭をすっきりさせたいときにはメンテナンスはぴったりだ。
しばらくして再びパソコンに向かうと、新着コメントの表示にちょっとどきっとする。
ナナから早速、さっきの返事が届いていたのだ。
なんだかわくわくするような気持ちでそれを確認してみる。
〈ミキさんの考え方にははっとさせられます。水槽の中の生きものたちにも、みんな役割があるんですよね。
知らないうちに、誰かの役に立っていたら嬉しいです。わたしもそんな人になりたいなって思います。何度もしつこくコメントしてしまってすみません。つい嬉しくて…。面倒だったら無視してくれて大丈夫です!ミキさんのブログはいつもチェックしているので。ナナ〉
「いや、面倒なんてとんでもないけど!」
ついひとりで呟いてしまう俺。
無視してくれて大丈夫ですなんて、無視なんかするわけないじゃん。
俺のほうこそ、長文で返したことに若干後悔してしまっていたところだ。ナナのほうからそんな申し訳なさそうにされると、なんていい子なんだとびっくりしてしまう。
すぐに返事をしようと思ったけれど、さすがに恥ずかしいので一晩寝かせることにする。
ナナってどんな人なんだろう。日記もブログも全部嘘だったとしても、ミキとの会話だけは嘘じゃないと信じたかった。


