〈お年玉とかハイセンスやな!さすが美貴ちゃん!弟くんに言うのもなんやけど、俺は美貴ちゃんのそういう所も好きなんやで?可愛い子ぶったり、天然のフリしたり、そういう女は俺は嫌いやから。単に美人やからってだけで美貴ちゃんのこと好きな訳じゃないから、それだけは弟くんにも知っといて欲しい!〉
流れ続けて来る壁新聞グループの無意味なやり取りの合間に森田から届いたメッセージは、意外にも真摯なものだった。
〈こんな女やめといたほうがいいですよ〉という俺の警告を簡単に跳ね返してくるあたり、ただ単に、めんどくさい体育会系の男って訳じゃなさそうだ。
美貴なら森田を見ただけで、「脳みそまで筋肉なんじゃない?」とか言いそうだけど、もしかすると、森田はちょっと他の男とは違うかもしれない。
悔しいけど、さすがチームを甲子園に導いただけのことはある。
可愛い子ぶったり、天然のフリしたりする女は嫌い。
それを言うのは簡単だけど、大抵の男は結局そういう女の子を好きになっちゃうものだ。七瀬さんみたいな女子に好意を寄せられたら、嫌とは言えないのが男だし。
〈綺麗と可愛いだったら、どっちが好きですか?〉
シンプルな質問。
俺は可愛いほうが好きだけど、美貴はどちらかというと可愛いくはない。なんとなく気になって森田に聞いてみる。頭の片隅には七瀬さんの顔が浮かぶ。
すぐさま既読になってしばらく返事がかえってこない。残りのスパゲッティをモサモサと口に運ぶ。冷めかけて麺がくっつき始めている。
ピンロン、とメッセージが届いた音がして携帯を見た。
〈俺は綺麗な子が好きでも可愛い子が好きでもないで。俺は美貴ちゃんが好きやから!美貴ちゃんは確かに綺麗やし可愛いけど、俺は美貴ちゃんの中身が好きやねん。〉
ぶっ、と思わず口の中身を噴き出しそうになる。
直球ストレート。てかこんなこと言って恥ずかしくないんだろうか。
でも、こんなことを平気で言える森田がちょっとだけ羨ましくなった。


