コメントの返事をすると、そのままナナのブログに飛んだ。
今日の日記を見てみると、既に更新されている。毎日ほとんど欠かさず更新されている、ナナの日記。
〈○月○日
今日は嬉しいことが二つあった。
一つ目は、ミキさんからコメントの返事をもらったこと!!
ダラダラ長文のわたしのコメントに、ちゃんと返事をくれるミキさんは、きっと美人で優しい人なんだろうなぁ。
あの後ろ姿の写真だけでも、ミキさんが綺麗なのは伝わってくる!
サラサラの長い髪、スタイルも良くて。あんな素敵なアクアリウムを作る人なんだから、きっと素敵な女性に違いない!
嬉しいことの二つ目は、好きな人と話が出来たこと。
だけど、せっかく話が出来たのに、緊張してまともに目も合わせられなかったし、無愛想な返事しか出来なかった。
わたしがミキさんみたいな綺麗な人なら、自信を持って話が出来たのかな。
〉
ナナの日記を読みながら、頬張っていたスパゲッティを吐き出しそうになる。
だってナナは、まるっきりミキがミキそのものだって信じている。写真も、コメントの内容も、嘘偽りがないと本気で信じ込んでしまっている。
確かにミキは実在する。あの写真は美貴だから。だけど、中身は俺だ。アクアリウムを作っているのもむさ苦しい男子高校生の俺だし、コメントを返しているのも俺。
なんとなく、ナナを騙しているみたいで可哀想になってくる。
ナナに好きな人がいるっていうのは新情報。過去の日記を見てみても、好きな人のことは書かれていなかった。
って、過去の日記まで読み漁るとか、ストーカーみたいじゃん俺。
ナナがオッサンだったらどーすんの。なんとなく自分が情けなくなる。
だけどこんな真面目な日記を書くナナが、嘘なんてつくだろうか。
……おっと危ない。これで信じ込んだらそれこそ俺がネット詐欺の被害者だ。
ネットの情報は信じない。SNSとかブログとか、嘘が当たり前の世界でこれは大前提なのだ。


