〈誕生日に欲しいものはお年玉らしいっす。弟の自分が言うのもあれですけど、こんな女やめといたほうがいいですよ!〉

冷蔵庫を覗きがてら、キッチンで森田にメッセージを送信する。
冷えたコーラをがぶ飲みして、トレイに用意された晩飯のスパゲッティをレンジに入れた。森田がこれでどう思うかは知らないけれど、もし幻滅したとしても俺の知ったこっちゃない。

「あちっ」

スパゲッティの皿の底が熱い。
温めた晩飯をトレイにのせて、ちょっとスッキリした気分で自分の部屋に戻る。

青白い光の中、ゆらめく水中の水草が綺麗だ。毎日見ても、飽きることはない。水槽のひとつに少し苔が発生し始めている。水中のバランスが崩れてきている証拠だ。

デスクのパソコンを起動させて、椅子に腰掛ける。スパゲッティを頬張りながら、ブログの画面を開いた。
更新するよりもまず真っ先に、コメント欄をチェックする。ナナからのコメントをもう一度じっくり読み返してから、返事を送る。

〈ナナさんこんばんは。
世界の終わりみたいに悲しいこと?どんな悩みなのか気になります。
水の中の魚たちにも、悩みはあるよ。
呼吸すること、食べること、そのバランスが崩れると水の中はすぐに汚れてしまうから。
その代わり、生命のバランスが上手くいっている水槽は、いつまでたっても水が透き通っていて綺麗なんだよ。
魚が呼吸することで、水草たちはその二酸化炭素を使って光合成をする。その酸素のおかげで魚たちは生きられる。エビも貝も、魚の食べ残しを食べたり苔を食べたりすることで役に立っている。
ナナさんも、きっと知らずに誰かの役に立っていると思う。ミキ〉