「ノックくらいしなさいよ変態」
スマホ片手にベッドでくつろいでいた美貴が、ドスの効いた声で威嚇する。
バイトから帰ってそのまま美貴の部屋のドアを開けたら、思いきり睨まれてしまった。どうやら機嫌が良くないらしい。
タンクトップにショートパンツ姿の美貴は俺には野獣にしか見えないけれど、森田はじめ他の男にとっては鼻血の出るほどレアな姿に違いない。
いっそ森田にも、この姿を見せてやりたいと思う俺。
「あのさ」
「何?」
「女の子って、誕生日にもらって嬉しいものとかあんのかな」
「…は?」
美貴がベッドから起き上がる。
「あんたどうかしたの?」
「何が」
「…だって、あんたが女の話なんて…魚しか興味ないんじゃなかったの?!」
「そんなんじゃねえよ。別に、彼女とかそんなんじゃねえから」
「なんだ。彼氏でもない男にもらって嬉しいものなんかせいぜいお年玉くらいのもんじゃないの」
「…お年玉って、金かよ。最低だな。聞いて損したよ」
「バカ。好きでもない男からプレゼントもらって喜ぶ女がどこにいんのよ。物で釣ろうなんて甘いっつの」
美貴が、フン、と鼻で笑って見せる。
もういいよ。と言いながらドアを閉める俺。
せっかく森田の為に嘘までついてリサーチしてやったっていうのに、まったく失礼な奴だ。
こんな女のどこが良いっていうんだろう。森田にも録音して聞かせてやりたい。


