「べつに俺、気にしてないよ」

「……ほんとに?」

「実際に熱帯魚マニアだし、オタクなのも認めるし。七瀬さんは悪くないから」

俺がそう答えると、七瀬さんはふふっと笑った。

「よかった。でも意外だなぁ、水嶋くんが熱帯魚マニアだなんて」

「そう?」

「うん。すごく意外。水嶋くんって、そんなに真面目そうにも見えないし、オタクっぽい感じもないし。そうだ、今度、わたしにも見せてよ。水嶋くんの飼ってる魚」

七瀬さんはにっこり微笑んで首を傾げている。
首を傾げるのが癖なのか、それとも計算しているのかはわからないけれど、やっぱりそれが可愛いのは認めざるを得ない。

「まぁまた、いつか機会があれば」

「いつかって、いつ?」

「ええと、そのうちに」

「もう、見せてくれる気ないでしょ。水嶋くんて、優しいのか冷たいのかわかんないよね」

七瀬さんはやっぱり笑っている。ちょっと拗ねたような表情も、やっぱり俺にはぴんとこない。
可愛いんだけど、なんか違う。何が違うかなんてわからないけど、とにかく違う、ような気がする。

「じゃあ、バイトあるから、俺」

「わかった。また明日ね」

七瀬さんが俺に手を振った。こんなのを見られたら、また中岡に何を言われるかわかったもんじゃない。そう思いながら俺も一応手を振った。