「この間の校外学習の感想文、まだ出してないやつは早く出せよー」
担任のタケノコが、黒板に提出期限いついつと書いている。タケノコは本当は武本だけど、滑舌がよくないことを陰でみんなにいじられている。自分の名字をしっかり発音出来ないなんて可哀想だけど、本当にそう聞こえてしまうんだから仕方ない。
「感想文提出なんてあったっけ?」
振り返った中岡が小声で聞いてくる。
「俺もう提出したし」
俺が答えると「まじかよ抜け駆け」と中岡。抜け駆けの使い方が意味不明だ。
「感想文提出が済んだら、グループに分かれて合同で壁新聞を制作してもらうからなー」
あちこちから「えーまじで」とか「えー嘘ー」とか、控えめに呟いているのが聞こえてくる。
感想文提出期限日の下に、タケノコが壁新聞制作と書いている。
「窓際から二列目までがグループ1、次の二列がグループ2、廊下側の二列がグループ3なー。模造紙は記事の内容が決まったら各グループの代表が取りに来るように」
突然のグループ分けにクラスがざわついている。壁新聞なんて小学校ぶりだ。タケノコが言い終わるやいなや、みんながみんな自分の列と隣の列のメンバーを確認する。
グループで相談してひとつのものを作る、という作業は、メンバー次第で難しくも簡単にもなるからみんな必死だ。


