〈ナナさん、はじめまして。
勇気を出してコメントをくれてありがとう。
アクアリウムが生きる芸術かぁ。スゴイ。
そう言ってもらえると、嬉しくなります。
わたしも、小さな水槽の中で命が循環していく様子を眺めていると心がすごく落ち着くから。
ショックなこと?
わたしも今日はちょっと色々と大変な一日でした。同じだね。
ミキ〉
真面目に返事をしていたら、思わず自分のことまで書いてしまった。
本当に、今日はなんだか大変な一日だった。
森田に呼び出しをくらって、変な告白までされて、おまけに七瀬さんと帰ることになって、まだ本気で好きになってもないのに勝手に玉砕。
玉砕っていっても、アクアリウム好きってことを隠しておけばよかったのかもしれない訳だけど、なんとなくそこは、嫌だった。譲れなかった。
それに、七瀬さんのあの顔も。
しばらく『ナナ』のコメントを眺めたあと、書いた返事を送信してからふと気になって、マウスを滑らせ『ナナ』の名前をクリックした。
ナナのブログのページに飛ぶと、装飾のないシンプルな白い画面に、丸っこい文字で表示された毎日の日記と、丸々とした茶色い子犬の写真。
写真だけを順番に見ていくと、写っているのはその丸々とした子犬がほとんどだ。
子犬の他は、空の写真。青空もあれば、夕焼けの空の写真もある。満開の桜や、うっすら雪の積もったどこかの庭。アップされているのは空や風景の写真ばかりで、お世辞にも、女子っぽい写真とはいえなかった。