コメントに愛想良く返事をしてやると、彼らはまたブログを覗きにやって来る。
会えもしない、顔もわからない相手のブログにせっせと通う気持ちは理解不能だ。
〈ヤマトヌマエビ、可愛いですよね。わたしも大好きです!うちの子は、とくに優秀なお掃除屋さんですよ!
ミキ〉
相手のブログを覗いてみると、やっぱり向こうもアクアリウム好きなオタクであることがほとんどだ。ここまでコアなアクアリウム好きの女の子なんて珍しいから、ミキに興味が沸くのだろう。
〈ミキさんは女だから、やっぱりレイアウトが繊細だなぁ!おれも見習いたい!
魚クン♂〉
「男だけどな」
レイアウトを褒められるのは嬉しいけど、やっぱりちょっと笑ってしまう。ミキって名前と後ろ姿の写真だけで、どうしてこうも簡単に女だって信じられるんだろう。こんなのいくらでも嘘をつけるのに。
〈魚クン♂さん!はじめまして!レイアウトにはこだわりがあるので、ほめてもらえて嬉しいです!また遊びに来てね♪
ミキ〉
こんな風にオタクに夢を与えている俺っていい奴じゃん。なんて自画自賛しながらコメントをチェックしていくと、見慣れない名前の、しかも長文のコメントを発見した。
思わず画面に近付いて、ちょっとお堅い感じの文章を目で追った。