僕の知らない、いつかの君へ



「だから、さよならってなんだよ!!」

悲しさと怒りがこみ上げて、パソコンデスクをドン、と殴り付けていた。

「くそっ」

さよならって何だよ。勝手に決めんなよ。

俺はドンドンと苛立ちに任せて机を殴り続けていた。だんだん拳が痛くなってくる。

「ちょっと!うるさいんだけど!」

部屋のドアが勢いよくバンと開き、キレ顔の姉貴が怒鳴り込んできた。

「ここマンションなのよ?!近所迷惑考えなさいよ!あたしだって受験控えて勉強してんの!あんたみたいなバカがボコボコ机殴ってあたしが大学落ちたらどうすんのよ!」

「うるせえよ!姉貴の怒鳴り声のほうがよっぽど近所迷惑だよ!」

「はあ!?バカの八つ当たりと一緒にしないでよバカ!」

「バカバカうるせえんだよ」

姉貴が般若のような顔で俺を睨み付け、バン!とドアを閉めて出ていった。廊下をわざとドスドスと音を立てながら部屋へ戻る音がする。姉貴の部屋のドアがまたバン!と勢いよく閉まる音が聞こえた。
いくら成績優秀で美人でも、あの性格はマジでないなと呟く俺。
女の子は控え目で、優しくて、柔らかい雰囲気じゃなきゃな。そう、菜々子みたいに。
と思いを巡らせてまた悔しい気持ちが沸いてくる。

俺はなんで、菜々子の気持ちに気付いてやれなかったんだろう。

別れたいって思うほど、俺は菜々子を知らずに傷つけていたのかもしれないのに。