僕の知らない、いつかの君へ



俺たち二人は他のカップルがしているみたいに、家に帰ってからも延々メッセージのやりとりをしているとか、ずっとテレビ電話を繋ぎっぱにしてるとか、二人で共通のTwitterアカウントを持つとかメッセージのトップを二人で撮ったプリクラに設定するとかそういうことは、一切しない。

会ったときに話をして、お互いの気持ちは目を見て確かめたいというのが菜々子のポリシーで、俺もそこは同じ気持ちだったから。

だけどひとつだけ、他のカップルが真似したくても出来ないコミュニケーションの方法が、俺たちの間には存在する。

それは、俺が彼女の心の中を一方的に覗き見るツールを、隠し持っているということだ。

それは他でもない、菜々子の、ナナの日記だった。

自分の気持ちをあまり表に出さない菜々子の気持ちは、この日記からなら知ることができる。だから喧嘩になりそうなときや菜々子がなんとなく落ち込んでいるなってとき、日記を読むことで解決できることも多かった。
いわばこの日記は、鈍感で無神経に菜々子を傷つけてしまうことの多い俺にとっての、唯一の助け船。だったのだけど。



○月○日


彼に、隠し事をしていることがバレてしまった。

わたしが顔に出るタイプだとはいえ、彼はやっぱり凄い。前にもわたしの考えていることが解るようなことが何度かあったけど。

明日、彼にすべてを話さなきゃいけない。

彼と、さよならをしなきゃいけない。