僕の知らない、いつかの君へ



「……何だよこれ……」

いつものように自宅のパソコンに向き合って、ナナのブログを覗いていた俺は思わず呟いていた。
俺の頭の中を一気に駆け巡る、驚きと怒りと、戸惑いの気持ち。

その日のナナの日記は、その二行だけ。

さよならの日が近付いている?

まだ話せていない?

それって一体、何の事だよ。

幸せに溺れまくっていた俺は、ちょっとしたパニックに陥っていた。

俺は今も、自分がミキとしてブログを更新していたことを話せていない。

だから、ナナの日記を読んでいることも、もちろん彼女には話していない。

さよならの日が近付いている?

その一文からは、ナナとの、壷井菜々子と俺の別れの日が近付いている、としか読み取れない。

彼にはまだ、話せていない?

俺には言えないような、別れる理由があるってことなのか?

そういえば、と思い当たる節が無いわけでもない。
最近の彼女はどこか話していても上の空で、時折ぼーっと俺の顔を眺めていたり、かと思えばいきなり悲しそうな顔をしたりするような事があった。
俺は、まったくそれを気にしていなかった訳ではないけれど、まさか別れを考えていたとまでは思ってなんていなかった。だけど。

「別れようと思ってる?」

なんて聞けるはずがない。だって彼女は、俺が日記を読んでいるなんて、夢にも思っていないのだから。